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ブログ特別編 非常用電源を作る

非常用電源を作る scene11    最後の仕上げ

インバーター、eパワー共に何とか動いてくれそうなので、いよいよ最後の仕上げで本番の配線に入りますが、一連の作業で負荷を掛けていったところで写真のように入力が6kwと表示され、このインバータの最大入力は6kwなので最大まで入力した事になり、この時の電圧が288Vなので電流は20.83Aとなり、最大値で動かしてもこの程度なのでケーブルも3.5sqあるので余裕だと思います。
でもチョット待って、このインバーターはスペック上の最大出力が6kwとなっていますが、PV入力も最大6kwで今回の様にPV入力に高圧バッテリーを繋いでこれで全ての出力を賄う使い方の場合、PVにフルに入力しても出力は効率が95%なので最大出力が5.7kwになってしまい、この中で最大出力6kwとうたって来た事がチョット違ってしまいます。
でも5%程度の違いなので良しとして貰いますが、過去のscene10にあるテスト中にerror code10が何度かでてしまいましたが、この時は入力は気にせずに出力ばかりを見ていましたが、今から考えると入力オーバーで出ていたと思われます。



まずはリチウムイオンバッテリーの端子から引き出した線が端子カバーに当たっていないかを確認し、+側はできるだけ電池に近い位置にヒューズを入れます。
ヒューズはテストの時に使ったものをそのまま動かないように端子Boxの蓋付近に束線バンドで固定し、この先は赤・黒をまとめて高圧回路を示すオレンジ色のコルゲートチューブに通して、車両後部のインバーターを設置する収納スペースまで引き込みますがこれが狭いところを通すのでチョット大変です。
前からリヤの収納スペースへ行っている線は、バッテリーの+の太い線が通ったパイプがリヤシートと床面の間を行っているだけで、他には配線らしきものは見当たりません。
仕方が無いのでリヤシートを外してバッテリーケーブルのパイプに沿ってコルゲートチューブを通し、その中に引き出した赤黒のケーブルを通します。
一緒に運転席から操作できるようにする為、コントローラー用のLANケーブルと信号用の多芯ケーブルも並べて敷設しておきます。
この引き出しに使った線は赤と黒のKIV3.5sqで極性が判る様にしましたが、リチウムイオンバッテリーからeパワーのインバーターを繋いでいるケーブルは+-共にオレンジ色の線で1本のコルゲートチューブに通してあり、赤黒になぜ色分けしないのか不思議です。
そういえば、ソーラーパネルのケーブルも+-両方とも黒でコネクタのオス・メスで区別していますが、これはもしかして屋外に設置する為に赤色は紫外線で劣化してしまうのかも知れませんが、ノートの場合はチューブに入れて車の見えないところを通るのでそんな心配は無く、万一局性を間違えて繋いでしまうと電圧も高く電力も大きいのでとんでも無い事が起きてしまいうでしょう。
それでも、そうしているからには何か理由が有るのでしょうが、その理由とかを聞いてみたいものですね。
これで全てのケーブル類を収納スペースまで引き込めました。



そこでインバータの設置場所ですが当初は車のリヤスペースに置こうと考えており、 スペアタイヤが取出せないと困るので位置を確認のため、リヤスペースの底板を開けたところ何とスペアタイヤが有りません。
聞くところによると最近の車はスペアタイヤを積んでおらず、代わりにパンク応急キットと電動のエアーポンプが積んであり、近頃は道路も良くなりタイヤの性能も向上してパンクなどめったに無いので、車検もスペアタイヤを搭載する義務は無いそうです。
確かにそう言われてみれば自分も50年以上も車に乗ってきましたが、その間で1度だけ空気が減りスタンドで確認したら釘が刺さっていて修理してもらった記憶は有りますが、パンクの為に路肩でタイヤ交換した事は一度も無く、結局スペアタイヤは全く使わなかった訳で半世紀以上も無駄にスペアタイヤを積んで走っていた事になります。
こんな低い確立の為に重いタイヤを1本用意して常時積んで置き、荷物スペースを狭くして燃費を悪くするなんて事は無駄としか言えないので納得ですよね。
でも、愛車jeepの背中に背負っているスペアタイヤは無くてはサマにならないので、無駄でも外せませんけどね。



そこでよく見ると元々スペアタイヤが有るべき場所は空いており、隙間を埋めるような形をした緩衝材に付属のパーツがはまっているだけで、これを取り除き12Vのバッテリーの位置を少し前に移動してやればインバーターがギリギリ収まりそうな感じです。
インバーターは34kgと非常に重いので簡単に載せてみるわけにも行かないので段ボールで型紙を作り、当ててみると何とかなりそうなのでまずバッテリーの位置を前方向にずらし、固定金具を縦方向から横方向に作り替えて何とか移動させました。
次にインバーターを載せる架台をアングルで構成して、本当にギリギリでインバーターを収納することが出来、振動で動かないようにブラケットで固定しました。
しかし、この収納は一連の作業の中で一番大変でしたが、自分でも「良く収まったったな。」と我ながら感心しています。



収納スペースの床板を戻すとまさかこの下に6kwのインバーターが入っているとは思えず、こうなるとトランスの設置場所をどこにしようか? と考えてしまい、ここまで綺麗に収まってしまったのでこの上に大きなトランスを2個も設置するのもヤボなので、AC出力の110V/220Vは少し気になりますが、まだ実証実験の延長上なので次のステップでトランスを考えることにして、今回はインバーターの出力より直接コンセントへ出力します。



インバーターが上手く収まったところで、リチウムイオンバッテリーからの高圧ケーブルがコルゲートチューブを通してリヤスペースまで来ているので、ここでチューブを分岐して接続用のプラBox側とインバーター側とに分けます。
まずeパワーの高圧用端子箱から出てヒューズを経由した赤色の+線と直接端子から出た黒色の-線は分岐よりプラBoxへ入り、+-共にブレーカーの一次側に接続し、+線は二次側よりリレーの片側へ接続、そしてリレーのもう一方よりチューブを通り分岐点を通過してインバーターのPV入力の+端子に接続されます。
ブレーカーの二次側より出た黒い-線は電流計測用CTのOUT側に接続しIN側から出た線はチューブを通ってインバーターのPV入力の-側に接続して高圧系のルートが完了です。



このプラBoxに設置したDCブレーカーの一次側には車の電源が入っている時は常時高圧のDC300Vが来ていて、このブレーカーで高圧のON/OFFを行い、直列に入っているリレーはomronのパワーリレーで、コイルはDC12V駆動で接点はDC400V,60Aと余裕があり、高容量遮断が可能なタイプの物です。
AC出力を6kwとした場合入力電流は21A程度てすが2倍以上の60A流せて電圧も100Vも余裕があり、チョット値段は高いですがこれなら安心です。
-側が接続されている高圧用のCTはDC400V、200Aまで計測可能ですが、これは駆動電源の-側が高圧に繋がっている為、絶縁型のDC-DCコンバーターで車の電源と絶縁して電源を供給しています。
これはscene10の様な失態を起こさない為には、しっかりと絶縁しておく必要があります。
この様にプラBox内には高圧が掛かっているので、鍵付きのBoxを採用し常時ロックしておく事で誤って高圧部に触れるのを防止しています。
又、この計測部には温度センサーが付属しており、センサーをインバーターのカバーの発熱が多い場所に貼り付けて、インバーターの温度を表示部でモニターできる様にしています。



次は運転席に設置する操作パネルですが図面を書いて特注し、ここにはインバータのコントロールパネルに組込まれている、小さいコントロールBoxを外して操作パネルに埋め込みますが、これはLANケーブルで本体と接続するようになっているので予め敷設して置いたケーブルでインバーターに接続します。
又、プラBox内のリレーをON/OFFする為のスイッチをこのパネルに取り付けますが、スイッチはキースイッチと押しボタン式のスイッチを直列に繋ぎサイドブレーキのスイッチに接続します。
これでサイドブレーキが掛かった状態で、キースイッチがONの時だけ押しボタンスイッチが有効で、ONするとランプが点灯してインバータが起動します。
キースイッチはON/OFFのどちらでもキーが抜ける為、OFFで抜いておく事で他人が運転した時でも誤操作を防止できます。
リレー駆動用の電源ですがこれはシガーソケットの裏側より分岐させて分けてもらうようにしています。
又、これとは別に高圧の表示部をルームミラーの上のスペースに取付、電源は隣に来ているドライブレコーダーから貰い計測部との通信は無線で接続されていて、車の電源がONの時は常時リチウムイオンバッテリーの電圧を監視し、インバーターがONの場合はインバータに流れる電流を表示します。
(プラBox内のブレーカーがONにしないと電圧は表示されません。)
車のメーターパネルには電池の形状をした小さい電圧インジケータが有りますが、目盛も荒く目安にはなりますが、今回の様に他の目的でリチウムイオンバッテリーから電力を分けてもらっていると電池の状態が気になり同時に監視する必要も有ります。
インバーターは車両後部の収納スペースに設置する為に、確認や設定を行うには収納スペースのカバーを開けて行う事になり、実際の運用には不便で支障も有りますが、これらにより運転席でインバータのON/OFFやPV入力、AC出力等の各電圧、電流などが判り色々な設定もここで行え、この操作パネルと表示部だけで電力を出力する為の機能を全て監視・制御できます。



今度はAC出力の配線でインバーターからL1、N、L2、アースの4本の線を接続して、ケーブルを車内からリヤゲート経由で引出し、この電力を車外に出力させる為に、200V用の4極埋め込み型コンセントと100V用の2極コンセントを防水パネルリフトカバープレートを2個使って、車両のリヤゲートに有るナンバープレート脇の左右の平らなスペースに穴加工して埋め込みました。
車のボディー形状は全て湾曲した3次元曲面で防水プレートを取り付ける平らな面は無く、仕方なくこのナンバープレート両脇の部分となりました。
ここは、海外向けの場合輸出先によっては横幅が2倍くらいの細長いナンバープレートも有り、取付スペースはこれらの配慮から左右が広くなっているようです。
この作業は車体への穴あけでチョット苦労しましたが、これでドアやハッチを閉めてもケーブルを挟む事無く給電できます。
この4極コンセントはL1、N、L2、アースに接続されているのでこの先の繋ぎ方次第で100Vが2系統と200Vが出力され、又、100V用のコンセントにはL1とアースが接続されています。
何もここまで大げさにコンセントを外部に設置する必要も無いかも知れませんが、チョット電気を使う程度であれば車内にコンセントを設置しても良いと思いましたが、最大6kwもの電力を連続して長時間給電する事を考えるとケーブルが挟まってドアを閉められなくなるので、あえて車外に設置しましたがかえって電源車と判って良かったかも?
でも、知らない人が見たら「何だアレ。」と不審に思われてもいけないので、緊急時に対応できる電源車で有る事が判るようにシールを張っておきます。



ここでは写真のように直接プラグを接続して車外に引き出す事が出来、右側の4極コンセントから引き出した線は接続の仕方で100V系2回路と200Vを1回路をコンセントより出力させる事が出来ます。
一方、左側のコンセントにはL1が繋がっており、ここからは直接普通の100Vプラグや充電器等を繋いで電力を供給する事が出来、又、車内にもAC100V用の2口コンセントを設置し、こちらはL2に接続されており車内からも電源が使えるようになっています。

全部配線が終わったところで給電のテストをしてみると、またやっちまったぁ~。
またしても見たく無いエラーマークが出てしまい、前回と同様に車の電源が入りません。
色々調べましたがどうもこのインバーター、ACを出力した時にPV側とフレーム間で数MΩの導通が起るようで、インバーターに高圧が通電されてもスタンバイ状態であれば問題ないのですが、操作パネルのパワースイッチを押してAC電力を出力させた時に起きたようです。
最終作業で正式に配線した為にインバーターのフレームと車のシャーシがアース線でしっかり繋がった為、これをeパワーが絶縁不良と判断してしまったようです。
どれくらいの絶縁抵抗を判定基準としているのかは判りませんがかなり厳しく見ている感じはしており、車なので浸水などのリスクを考慮すると当然かも知れません。
後日、診断機によりリセットしてもらいましたが、やはり絶縁不良のログが残っていました。
対策としてはインバーターのフレームを車のシャーシから浮かせて絶縁するようにしました。
ここは本来であればインバーターのフレームと車のシャーシは同電位で有る事が望ましいのですが、これがインバーターの特性なのでこの辺は今後インバータを選択する時の確認事項となりますが、今回は実証実験の範囲なのでこのまま進めて様子を見ます。

振り返ってみるとこの計画で一番重要な事は、ノートeパワーからうまく高圧のDC300Vを引き出して、ここから20A程度の電流を出力しても問題ないか?と言う事と、この取出した高圧の走行バッテリーからの電源をソーラー用のオフグリッドインバーターに供給して、上手くAC100V/200Vの電力を出力出来るか?と言う事で、この2点に集約されると思いました。
ノートeパワーはここまでは良く動いてくれていますが、さらに長時間連続動作させて様子を見る必要が有ります。
ここで使ったインバーターはLVX6048と言う単相3線式出力のものですが、なにもこれでなくても良く色々探すと3相出力のインバーター等もあり、負荷として大型の冷蔵庫などを考慮するのであれば、この手のインバータを繋ぐのも良いですが、本来の目的用であれば入力がDC200V~400Vくらいで、出力が単相3線式のAC100V200V、50/60Hzの仕様で良く、今回のインバーターにはグリッド入力や売電用の系統連携機能、DC48Vのバッテリー端子や低圧からのインバーター機能、バッテリー充電機能と使っていない機能が多く、これらを省いたインバーターが理想で単純な機能であれば、もっと小型で軽量化できて価格も安くなると思います。

リーフの様なEVも高圧電源が簡単にコネクタで接続出来れば、この程度の安いインバーターを繋ぐだけで簡単に電源が取り出せますが、安全に配慮するのでV2HとかV2Lの様な規格が出て来てまたややこしくなります。
この高圧の取り出しは本来であればV2HやV2Lのように、大げさなほどのコネクタでしっかりしたプロトコルで通信し、間違えてもコネクタが刺さっていない状態で、車側のコネクタのコンタクトに電圧が出ている事の無い様にする必要が有り、このコネクタの電源コンタクトはメスのソケットになっていて、Φ8位の丸棒が入ってしまうほどの太さです。
なので確実に電圧を遮断しておかないと、子供の指くらい入ってしまうので大変な事になってしまいます。
非常に太いコンタクトですが最近の90kwタイプの急速充電機などは、360Vで200Aなんて恐ろしい電力を流し込み、そのためにはこれくらいのコンタクトは必要になりますね。
そんな訳で素人の我々が扱う急速充電用のコネクタなので、安全に配慮した当然の規格であるのは当然ですが、今回の実証実験のようにインバーターを車に積んでしまえば高電圧を我々が触る事が無く、2次側のコンセントに電気製品のプラグを差し込むだけで運用でき、 これなら家庭で普通に掃除機やドライヤーなどのプラグを抜き差しするのと同じ事になります。
この様にすればV2HやV2Lの規格を気にする事が無くなるでは? 元々この規格は一般の人が安全に高圧の電源を接続する為の規格だと思われ、最初からインバータを組み込んで高圧部には触れなくすれば、V2H、V2Lは無視しても良いのではないか?とも思います。
この様に車とインバータを一体と考えれば、前述のような高圧系の安全対策も不要となります。

色々と勢いここまででやってきましたが、ここで最初から気になっていたアースの問題について少し考えて見ます。
家庭用の単相100Vや単相3線式100V/200Vの配線は、必ず片側が接地されていますが(単相200Vは中点のNが接地)、車のバッテリーからAC100Vを取り出すインバーターなどにはアースの表記は見当たりません。
同様にPHV・PHEVなどに搭載されているAC100V電源もアースはどうなっているのか?
V2HのLEAF to HOMEなどの機器は大きく設置型なので、アース接続は最初から済んでいると思いますが、V2L機器となるニチコンのPower Moverの場合取説には、『大地にアースされている電気機器を接続する場合は、本機も大地に接続してください。』『アース接地には「電気工事士」の資格が必要です。』とあり、つまり、洗濯機や冷蔵庫のようなアースが必要な機器では無く、ストーブやテレビのようなものを使う分にはプラグを差すだけなので誰でも使えるようです。
そもそもこのアースですが、普通我々が家庭や職場で使っている電力は電力会社の送電網より送られて来る高圧の電源を、柱上トランスで降圧して各家庭などに給電しており、この過程で高圧系統の異常などから2次側で有る100V/200V系統に高圧が漏れた場合に、アースに電流を流して感電事故を未然に防ぐ目的が有るわけですが、例えばエンジン発電機で単相100Vを使う場合普通はアースを繋ぎません。
この場合、アースに繋がなければ2本の線の片側ずつ触っても感電はせず、両側を同時に触らない限り安全ですが、片側をアースに接続した場合は反対側に触ると大地を通して感電してしまいます。
この様に独立した電源であればアースは無いほうが良いのでは?というように考えてしまいますがどうなんでしょうか?
また、単相3線式で家庭などの配電盤に繋いだ場合は、配電盤側でアースに落ちている場合もあるかも知れませんが、これも問題ないと考えます。
そんな訳でアースは必要に応じて繋ぐ事として運用すれば良い、と言う事にしましょう。

ここで最初のscene1で書いた『今回の計画はこの辺に重点を置き、非常用電源として機能は当然の事ですが、設置や維持に掛かる費用や手間をどけだけ小さく出来て、イザと言う時に最大限の効果が発揮できるものである事です。』と言う目的についての検証ですが、この開発ポイントの中で特に維持、管理を楽にするという点では目的を達成できたと思っております。

ノートeパワーとLVX6048というインバータの組合せで進めてきましたが、結論として電力の供給源としてはこのeパワーで正解だと思いますが、インバーターのほうは出力電圧や絶縁抵抗、大きさなどを考えると、この目的に合ったもっと最適なものを探す必要も有りそうですが、今回はソーラー向けの製品を無理に流用した割には良く動いてくれました。

これで実証実験としてノートeパワーから無事最大6kwのAC電力を出力させる事が出来、基本的な目的の実証は出来た訳で細かい事を言出したらきりが無く、もし、この方式を実用化するのであれば、有る程度の安全対策は必要になりますが、その辺もこの実車をベースにもう少し検証と確認作業を進めて行きたいと思いますが、この実証実験はとりあえずここまでとします。

     
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